中小企業の経営者は、日々の業務に追われている中で、将来の事業リスクや税金対策について考える時間もなかなか取れないものです。
そんな経営者にとって、経営セーフティ共済は、取引先の倒産リスクに備えながら節税対策もできる、まさに一石二鳥の制度といえます。
本記事では、経営セーフティ共済のメリットやデメリット、注意点などを詳しく解説するとともに、最新のルール改定についても触れていきます。
経営セーフティ共済の加入を検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
経営セーフティ共済とは?中小企業の経営を守る制度
経営セーフティ共済は、取引先が倒産し、売掛金などの回収ができなくなった場合に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
中小企業基盤整備機構が運営しており、中小企業倒産防止共済法に基づいて創設されました。
経営セーフティ共済の目的と概要
経営セーフティ共済の目的は、中小企業の連鎖倒産を防ぎ、安定した事業活動を支援することです。
中小企業は、取引先が数少ない場合が多く、取引先の倒産によって大きな影響を受ける可能性があります。経営セーフティ共済は、そのようなリスクに備えるためのセーフティネットとして機能します。
経営セーフティ共済は、掛金制度です。毎月一定額を積み立て、取引先が倒産した場合に、積み立てた掛金総額の10倍(最大8,000万円)まで、無担保・無保証人で借入することができます。
経営セーフティ共済の加入資格
経営セーフティ共済に加入できるのは、継続して1年以上事業を行っている中小企業者です。中小企業者は、業種によって「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する従業員数」のいずれかに該当する必要があります。
法人であれば、資本金の額または従業員数のいずれかを満たせば加入できますが、個人事業主の場合は従業員数の条件を満たす必要があります。
ただし、医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人などは、加入できません。
経営セーフティ共済の掛金について
経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円から20万円まで、5,000円単位で自由に設定できます。
また、加入後に増額することも可能です。ただし、積み立てられるのは、掛金総額が800万円までです。
掛金は、毎月27日(27日が休日の場合は翌営業日)に預金口座から引き落としで払い込みます。
経営セーフティ共済のメリット:節税効果や資金調達など
経営セーフティ共済には、以下のメリットがあります。
掛金が損金または必要経費に算入できる
経営セーフティ共済の最大のメリットは、掛金を支払うことで、法人税または所得税の節税効果が期待できることです。
掛金は、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費に算入できます。
たとえば、掛金を月額20万円に設定すれば、年間240万円を損金または必要経費に計上できます。
取引先の倒産時に無担保・無保証で資金を借りられる
経営セーフティ共済の本来の目的は、取引先の倒産による資金繰り悪化や連鎖倒産を防ぐことです。
取引先が倒産した場合、経営セーフティ共済に加入していれば、無担保・無保証人で掛金総額の10倍(最大8,000万円)までの資金を借りることができます。
解約手当金を受け取ることができる
経営セーフティ共済は、任意で解約することができます。解約した場合には、解約手当金を受け取れます。
解約手当金の金額は、掛金納付月数によって異なります。
掛金を40ヶ月以上納めていれば、全額返還されます。
経営セーフティ共済のデメリット:注意点も理解しておこう
経営セーフティ共済には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。
解約手当金は課税対象になる
解約手当金は、法人税または所得税の課税対象となります。
つまり、解約手当金を受け取ると、その金額が収入として計上され、税金を支払う必要があります。
早期解約は損をする可能性がある
経営セーフティ共済は、40ヶ月未満で解約した場合、全額返還されません。
解約手当金の金額は、掛金納付月数によって減額されていきます。
加入条件や手続きなど、事前に確認しておくべき事項
経営セーフティ共済に加入する前に、以下の事項を確認しておく必要があります。
- 加入資格を満たしているかどうか
- 掛金の金額はどのくらいにするか
- 解約手当金の金額はどのくらいになるか
- 解約のタイミングはいつにするか
- 手続き方法
経営セーフティ共済の加入・解約手続き
経営セーフティ共済への加入手続き
経営セーフティ共済に加入するには、中小企業基盤整備機構または委託団体に申込みが必要です。
申込みに必要な書類は、以下のとおりです。
- 契約申込書
- 掛金預金口座振替申出書
- 重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書
- 所得税または法人税の確定申告書
- 所得税または法人税の納税証明書
経営セーフティ共済の解約手続き
経営セーフティ共済を解約する場合は、解約届出書を中小企業基盤整備機構または委託団体に提出する必要があります。
解約届出書には、解約理由、解約日などを記入する必要があります。
解約時の注意点
経営セーフティ共済を解約する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 解約手当金は課税対象となるので、解約のタイミングは慎重に検討する必要があります。
- 早期解約は、解約手当金が減額される可能性があります。
まとめ
経営セーフティ共済は、取引先の倒産リスクに備えながら、節税対策もできる有効な制度です。
しかし、解約手当金が課税対象となることや、早期解約は損をする可能性があるなど、注意点もいくつかあります。
経営セーフティ共済の加入を検討する際には、メリットとデメリットをよく理解した上で、慎重に判断する必要があります。
また、税理士などの専門家に相談するのも有効です。
税理士は、経営セーフティ共済のメリットやデメリット、最新のルール改定などについて詳しく説明し、企業にとって最適なアドバイスをしてくれるでしょう。
経営セーフティ共済を活用して、安定した経営を実現しましょう。
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